高濃度乳腺(デンスブレスト)とは
乳房は、乳腺と脂肪という組織で構成されています。このうち、乳汁を産生・分泌する組織が乳腺で、脂肪は乳腺を支えている組織です。
高濃度乳腺は、乳腺組織がよく発達した状態の乳房のことです。高濃度乳腺自体は、異常ではありません。
ただし、乳がん検診で行われているマンモグラフィでは、高濃度乳腺の場合、全体的に白っぽく見えてしまい、病変の効果的な早期発見が難しくなってしまう場合があります。
マンモグラフィでは、脂肪は黒っぽく透けた状態として写りますが、乳腺組織は白っぽく写ります。また、しこりや石灰化、構築の乱れといった乳がんの早期発見につながる病変も白っぽく写ります。
そのため、乳腺組織が多いと全体に白っぽい塊として見えるため、同じ白の異常所見がそこに紛れてしまい、見えにくい状態になるため慎重な判断が重要になります。
逆に脂肪が多い乳房の場合は、透過性が高いため小さな異常所見も発見しやすいのです。
一般的に「高濃度乳腺」として問題にされていますが、乳房内の乳腺組織と脂肪組織の量によるマンモグラフィの背景乳腺所見は「高濃度」「不均一高濃度」「散在性」「脂肪性」の4種類に大きく分けられています。
このうち、高濃度と不均一高濃度が高濃度乳腺とされています。
1高濃度
約10%を占めます。アジア人は欧米人に比較して高濃度乳腺の割合が多いとされており、日本で行われた調査で50歳以下に限った場合には80%近くが高濃度乳腺だったという報告がされたこともあります。
高濃度乳腺は若年から閉経前に多い傾向がありますが、閉経後でもホルモン補充療法を受けている場合には高濃度であることが珍しくありません。
2不均一高濃度
約50%を占めます。マンモグラフィの画像では上は白い乳腺組織が多く、透過性が低いため異常の発見が困難な場合があります。
日本女性では40~50歳代にかけて不均一高濃度が多い傾向があります。この年代は乳がん罹患率が高いため、より慎重な判定が求められます。
3散在性
約30%を占めます。乳腺は線のような索状のみですから、比較的異常所見がわかりやすい乳房です。中高齢女性に多い傾向があります。
4脂肪性
約10%を占めます。乳腺組織のほとんどが脂肪に置き換わっていて、マンモグラフィで異常所見を発見しやすい状態です。高齢女性に多くなっています。
乳腺濃度について
乳腺濃度 | 年代 | 割合 | 病変の発見 |
---|---|---|---|
高濃度 | 30~40代 閉経前 |
約10% | 見つけにくい |
不均一高濃度 | 40~50代 閉経前~閉経周辺期 |
約50% | 見つけにくい |
散在性 | 中高齢 多授乳女性 |
約30% | 比較的見つけやすい |
脂肪性 | 高齢女性 多授乳女性 |
約10% | 比較的見つけやすい |
高濃度乳腺の問題点
病変の発見が難しい
高濃度乳腺の場合、豊富な乳腺が濃い白でマンモグラフィに写し出されるため、やはり白く写ることがほとんどのしこり・石灰化・構築の乱れといった乳がんの早期発見に役立つ所見が乳腺に紛れてしまい、発見しにくくなってしまう可能性があります。
ただし、高濃度乳腺であっても見つけにくい場合があるということであり、全例が判読困難というわけではありません。マンモグラフィが早期発見に大きく役立つケースもたくさんあります。
マンモグラフィだけでなく、高濃度乳腺に適した超音波検査を併用するなど、見落としの可能性を減らして検査精度の向上を図ることで効果的な早期発見につなげることも可能です。
乳がんリスク因子である
もう1つの問題点は、高濃度乳腺が中程度のがんリスク因子であるということです。ただし、高濃度乳腺とがんの発生との関連がなぜ起こるのかについてはまだはっきりとわかっていません。
乳腺の濃度は、年齢や授乳期間、ホルモンの状態などにも大きく左右されます。高濃度乳腺自体は異常ではありませんので、セルフチェックを定期的に行い、検診をしっかり受けていればそれほど心配する必要はありません。
よくある質問
見落としの可能性を減らすためにはどうしたらいいですか?
超音波検査(エコー検査)の併用をおすすめしています。
超音波検査は、身体への負担なく検査が可能であり、比較的短時間に検査できます。
特にマンモグラフィでは描出が難しい「やわらかい病変」の検出を得意としています。
超音波検査は、検査中に組織や細胞を採取して病理検査を行うことも可能です。
超音波検査を受ければ、マンモグラフィを受ける必要はありませんか?
マンモグラフィも必要です。
マンモグラフィは、超音波検査で描出が難しい「石灰化」「構築の乱れ」の発見に優れた検査です。
早期の乳がんは特に石灰化によって発見されることが多く、高濃度乳腺ではマンモグラフィで発見しにくい場合もあるというだけですから、マンモグラフィはやはり有効な検査ですし、不可欠です。
高濃度乳腺の場合、マンモグラフィに超音波検査を併用することで検査精度を向上でき、見落としの可能性を減らせることができると言えます。
高濃度乳腺を指摘されたら、どんなことに気を付ければいいですか?
過度に心配する必要はありませんが、定期的にセルフチェックを行い、検診を欠かさずに受けるようにしてください。
乳腺濃度は個人差が大きく、年齢や体質、授乳の有無や頻度、ホルモン環境などによって変化していきます。
たとえば、授乳機会が多かった乳腺は脂肪との置き換わりが進みやすい傾向があります。
また、閉経後は散在性や脂肪性の割合が増えていきますが、閉経後もホルモン補充療法を受けていると高濃度乳腺になりやすいとされています。
高濃度乳腺は乳がんのリスク因子ではありますが異常や病気ではありません。あまり心配する必要はなく、毎月、決まった時期に自己触診によるセルフチェックをしっかり継続して行い、定期的に検診を受けることが重要です。