その他の病気予防

その他の病気予防

乳がんの診断後、再発予防のために生活習慣を改善したいと考える方は多いと思われます。乳がんは40~50代以降に診断されるケースが多く、その時期は加齢などによる影響で他の病気にもかかりやすくなります。運動は乳がん再発予防だけでなく、その他の病気予防にも効果的で、数多くの論文が発表されています。このページでは、運動が心疾患予防や別部位のがん予防にどのような効果をもつかを解説していきます。

別の病気を予防する重要性

乳がんは他の部位のがんと比べると予後が良いことが特徴的です。国立がん研究センターによると、乳がん診断後の5年後生存率は92.3%と報告されています(1)。乳がんの5年後生存率が高い一方で、治療の影響で心疾患にかかるリスクが高いと言われており、欧米では乳がん診断後に別の病気を予防することの重要性が高まっています(2)。また、ホルモン薬の副作用で体重が増えやすくなるという研究もあり(3)、過度な肥満は高血圧や高血糖の原因になります。高血圧、高血糖などに複数該当すると、将来的に心疾患や脳血管疾患などの重い病気のリスクが高まるため注意が必要です。

乳がん経験者の持久力は低い

乳がん経験者の心疾患の割合は同世代女性の3倍程度高いと言われており、その理由としては化学療法の影響で心臓の機能が低下する(心毒性)などが報告されています(4)。心臓の機能は持久力とも強く関連しており、乳がん経験者の持久力は同世代の女性と比較して約10年分低いです。持久力が低すぎると心疾患を引き起こしやすいため、持久力をつけることは疲れやすさを改善するだけでなく、心疾患の予防にもつながります(5)。

運動で別部位のがんリスク減少

運動量を増やすことは、他のがんを予防する上でも非常に重要です。女性に多いがんの第1位は乳がん、第2位は大腸がん、第3位は肺がんですが、適度な運動は乳がん・大腸がん予防にほぼ確実で、肺がんについてはデータが不足しているものの、現在喫煙者または過去喫煙者の場合に限っては運動が肺がん予防に効果的な可能性があることが世界の大規模研究から報告されています(6)。運動ががん予防に効果的な理由は、運動によって体内の免疫力が強化され、がん細胞を攻撃するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きが活性化することなどが挙げられます(7)。

運動と総死亡リスク

日本乳癌学会のガイドラインによると、運動量の多い乳がん経験者は、運動量の低い乳がん経験者と比べて、様々な疾患を含めた総死亡リスクが約40%低いことが報告されています(8)。運動が長生きに良いことは多くの方が既にご存知だと思いますが、乳がん経験者を対象とした場合も同様の結果になることが実証されています。具体的な運動量としては、1日あたり20分程度、歩行以上の強度で体を動かせると理想的です。通勤時の歩行も運動に含めてOKです。無理のない範囲で体を動かしていきましょう。

参考文献

(1)国立がん研究センター, 最新がん統計, 2021.
(2)Mehtaら, Circulation, 2018.
(3)Nestoriucら, Ann Oncol, 2016.
(4)Thavendiranathanら, J Clin Oncol, 2016.
(5)Kodamaら, JAMA, 2009.
(6)Schmidら, European Journal of Epidemiology, 2016.
(7)Hojmanら, Cell Metab, 2018.
(8)日本乳癌学会, 乳癌診療ガイドライン2018年版, 2018.

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