乳がん再発予防

乳がん再発予防のためにできること

乳がん日本乳癌学会のガイドラインによると、私達が日常生活でできることとしては「適正体重を維持すること」「運動不足を防ぐこと」が推奨されています。また、「大豆を含んだ食品を食べること」は乳がん再発リスクを減らす可能性があることも報告されています(1)。

肥満予防で乳がん再発リスク減少

肥満は乳がん再発リスクを上げることが報告されています。肥満が再発リスクを上げるメカニズムは複雑ですが、脂肪から女性ホルモン(エストロゲン)が作られることや炎症系の血液値が上昇すること、体内の免疫機能が低下することなどが挙げられています(2)。肥満の定義は研究によって様々で、乳がん診断後に5~10%以上の体重増加があったか否かなどの基準が用いられています。乳がん診断後に肥満度が上昇した乳がん経験者の再発リスクは約30%高いことが報告されており、過度な体重増加を防ぐことはとても重要です。体重コントロールには運動よりも食事の方が約4倍効果がありますので、体重増加が気になる方は食事改善も同時におこなえると理想的です(3)。

痩せと乳がん再発

痩せと乳がん再発については世界的に研究数がとても少なく、分からないことが多い現状です。一般論として痩せすぎは様々な疾患リスクや死亡リスクを上げますので、BMI18.5未満(身長160㎝の女性なら体重47キロ以下)の方は体重の減らしすぎに気を付けましょう(4)。

運動不足解消

適度に運動している乳がん経験者は乳がん再発リスクが低いです。日本乳癌学会が作成した患者さん向けのガイドラインには、「乳がん経験者で週に1時間程度のウォーキングをしている女性は、ほとんど運動をしていない女性と比べて、乳がん再発リスクが約25%低下した」と記載されています(5)。運動で再発リスクが減る理由としては、体脂肪のつき過ぎを防ぐことや、免疫の働きが改善されることなどが挙げられます。体脂肪がたまりすぎると体脂肪から女性ホルモンが作られ、再発リスクが上がるのですが、運動することで体脂肪の過度な蓄積を防ぐことができます。また、運動によって体内の免疫が強化され、がん細胞を攻撃するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きが活性化するなどの理由で、乳がん再発リスクが低くなると言われています(6)。

大豆を含んだ食品を食べる

イソフラボンは大豆食品に多く含まれ、乳がん再発リスクを下げる可能性があると乳癌学会のガイドラインで報告されています(1)。大豆にはエストロゲンの働きを高めるエストロゲン作用と、エストロゲンの働きを弱める抗エストロゲン作用があり、様々な意見がありますが、乳がん経験者を対象とした場合、大豆摂取は再発予防に対してポジティブな作用があります。また、大豆食品(イソフラボン)の摂取で健康に関わる有害事象が増えたという報告は無く、乳癌学会のガイドラインには「乳癌患者さんが大豆摂取することを推奨してもよい」と記載されています。

どれくらいの大豆摂取が望ましいかについて、質の高い研究を参考にすると、1日のイソフラボン摂取量が42.3㎎/日を超えた群の乳がん再発リスクが低いことが報告されました(7)。この量はおおよそ納豆1日1パックまたは1日に豆乳200ml1本を飲むと達成できる量です。豆腐も半丁(150g)食べると十分なイソフラボンがとれますので、食事バランスを崩さない範囲で適量を召し上がっていきましょう。

参考文献

(1)乳癌学会, 乳癌診療ガイドライン2018年版, 2018.
(2)Picon-Ruizら, CA Cancer J Clin, 2017.
(3)Foster-Schubertら, Obesity (Silver Spring), 2012.
(4)Global BMI Mortality Collaboration, Lancet, 2016.
(5)日本乳癌学会, 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版, 2019.
(6)Hojmanら, Cell Metab, 2018.
(7)Kangら, CMAJ, 2010.

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