運動のメリット

運動のメリット

運動は乳がん経験者にとって、多くのメリットがあります。代表的なものとしては、乳がん再発予防、体力アップなどです。運動の効果は世界中で研究報告されており、乳癌学会のガイドラインでも定期的な運動が推奨されています。

乳がん再発予防

日本乳癌学会の患者さん向けガイドラインには、「乳がん経験者で週に1時間程度のウォーキングをしている女性は、ほとんど運動をしていない女性と比べて、乳がん再発リスクが約25%低下した」と書かれています(1)。25%の再発リスク低下はとても大きな数字です。私達が日常生活でできる乳がん再発予防の方法として、運動の継続は非常に重要です。

日本に限らず、アメリカの国立がん研究所のホームページにも定期的な運動で乳がん再発リスクが低下することが記載されています(2)。世界的に有名な医学雑誌の報告によると、約3,000人を対象に運動と乳がん再発について調査した結果、週に約3~4時間の運動をしている方は、ほとんど運動していない方と比べて乳がん再発リスクが43%低かったというデータも出ています(3)。

一般的には1日に20~30分程度の運動(週に150分以上の運動)が、乳がん再発予防のために望ましく、自宅で動画サイトを見ながらの筋トレやヨガもオススメです。

死亡リスクの減少

日本乳癌学会のガイドラインによると、1日に約30分運動している方は、ほとんど運動していない方と比べて死亡リスクが44%低いと報告されています(4)。これは複数の研究論文を統計的にまとめたものであり、1つだけの研究論文よりも信頼性の高い情報です。運動量が多い方の死亡リスクが低い理由として、運動は死因上位である心疾患の予防に効果的であることが考えられます(5)。

体力アップ

運動すると体力が上がるのはイメージしやすいと思いますが、体力が上がると実は寿命が延びることも報告されてます。一般論として、持久力が低い方は、持久力が高い方と比べて死亡リスクが約1.7倍高いことが世界の有名医学雑誌で報告されています(6)。乳がん経験者の場合、抗がん剤などの影響で約10年分の持久力が低下すると言われており、低すぎる持久力は乳がん診断後の合併症を引き起こす可能性もあります(7,8)。

幸い、乳がん経験者の場合でも運動を継続すると、持久力が着実に向上しますので、疲れやすさなどを自覚するようになってから運動を新しく始めても十分に間に合います。持久力を上げるためには、ランニングやウォーキング、筋トレなどがおすすめです(9)。

今の持久力を簡単に測定する方法として、5分普通に歩いた道を、3分で走って戻れれば、健康に望ましい持久力があります。10分くらいで終わりますので、自宅周りの歩道や公園で試してみましょう(10)。

参考文献

(1)日本乳癌学会, 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版, 2019.
(2)National Cancer Institute, For Women with breast cancer, regular exercise may improve survival, 2020.
(3)Holmesら, JAMA, 2005.
(4)日本乳癌学会, 乳癌診療ガイドライン2018年版, 2018.
(5)Kodamaら, Diabetes Care, 2013.
(6)Kodamaら, JAMA, 2009.
(7)Lakoskiら, Breast Cancer Res Treat, 2013.
(8)Yuら, JAMA Cardiol, 2020.
(9)Okumatsuら, Breast Cancer, 2019.
(10)厚生労働省, 運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書, 2013.

TOPへ