術後の合併症

術後の合併症

乳がん乳がん手術後に合併症が出ることがあります。診察のもと適切な治療を受けることが重要ですので、症状が気になる場合はまず担当の先生へご相談ください。

わきの下に液が溜まる

手術後にわきの下や手術部付近にリンパ液や血液が溜まることがあり、腫れや痛みの症状として現れることがあります。時間と共に回復していきますが、症状が落ち着くまでは激しい運動は控えましょう。傷口から液が出てきたり、皮膚が赤く腫れてきた場合は、なるべく速やかに担当の先生にご相談ください。

腕や肩の運動障害

乳がん手術後や放射線療法後に肩の可動域が低下したり、腕や胸のつっぱり感を感じやすくなることがあります。可動域は時間の経過とともに改善していきますが、定期的に運動をすることで改善スピードが何もしない群よりも約2倍早くなることが報告されています(1)。ただし、手術直後に無理に体を動かすと、液がたまりやすくなるとも言われていますので(2)、主治医の先生から運動の許可をもらってから、無理のない範囲で体を動かすよう心がけましょう。

日本人乳がん経験者を対象とした研究では、乳がん経験者の上半身の筋力は同世代の女性と比べて低いことが報告されています。具体的には、乳がん経験者の上半身の筋力は同世代女性100人中下から約15番目の体力レベルでした(3)。上半身の筋力低下に加えて、バランス能力も低くなっていることが研究で指摘されています。

手術創部の皮膚障害

放射線治療の際に、放射線が当たっている部位に炎症が起こり、皮膚の赤み・乾燥・ただれるなどの症状があります。保湿剤は放射線治療の後の乾燥を緩和して皮膚トラブルを予防する効果があるので、積極的に使用しましょう。

また、運動時に服と肌がこすれることで炎症が起こるケースもあります。なるべく肌触りの良い素材(シルクや綿)やスポーツウェアなどをご活用ください。

腕のむくみ

手術後に腕にリンパ液が溜まり、腕がむくむことがあります。この状態をリンパ浮腫と呼び、リンパ浮腫は予防する取り組みが重要です。乳がん経験者を対象とした海外の研究では、無理のないペースで運動すれば、リンパ浮腫の発生頻度が低いことが報告されています(4)。

重要なことは、急に頑張り過ぎず、少しずつ運動の強度を上げていくことです。手術後に腕が動かしにくく、可動域を早く取り戻したい気持ちもあると思いますが、無理は禁物です。久しぶりに体を動かす際は軽い運動にとどめ、慣れてきたら運動の量や強度を増やしていきましょう。

運動強度の上げ方としては、2回連続(例えば月曜日と木曜日)で同じ運動強度でおこない、翌日に腕のむくみや痛みなどがなければ、3回目の運動の際に少し強度を上げていく方法がオススメです。

また、すでにリンパ浮腫のある方でも、筋トレなどの運動がおこなえます。最初は無理のないところから始めて、少しずつ運動の強度を増やすことで、リンパ浮腫の更なる悪化を抑えることができると、国際的な医学雑誌などで報告されています(5)。

感染症

乳がんの手術後、切除した部位付近に細菌が入り込み感染しやすくなります。術後創部の感染症を疑う場合は、医師による適切な治療が重要ですので、運動を一旦停止し、担当医のアドバイスを参考になさってください。

参考文献

(1)Beurskensら, BMC Cancer, 2007.
(2)日本乳癌学会, 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版, 2019.
(3)奥松ら, 体力医学, 2018.
(4)Schmitzら, JAMA, 2010.
(5)Schmitzら, JAMA Oncol, 2019.

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