術後の痛み・違和感

痛みの種類について
急性的な痛み
乳がん手術後、患部に痛みが生じることがあります。薬などによる適切な治療が重要ですので、担当の先生へご相談ください。担当の先生へ痛みの情報を正確に伝えるために、痛みのメモを取ることもオススメです。メモを取る際は、①痛みが起こった日や回数②痛みのある部位③どのような痛みか(鋭い痛み、ヒリヒリと焼けるような痛みなど)④痛みの程度(10が限界として1~10でどれくらいの痛みか)⑤どういった動作の時に痛みが生じるかなどをメモすると、担当の先生と円滑なコミュニケーションがおこなえます。
慢性的な痛み
長期的に続く痛みは、日常生活のストレスになりやすく、生活の質を下げる原因にもなります。主治医へご相談のもと、薬などによる適切な治療に加えて、生活習慣の改善や、活動的に過ごすことも重要です。また、痛みがひどくなってから治療を開始するのではなく、痛みがひどくなる前に医療機関へ受診するようにしましょう。
痛みがある時に運動をおこなっても良いのでしょうか?
痛みの原因が急性期の炎症であれば、まずその治療が必要です。術後の慢性的な痛みは医師や理学療法士など専門家のサポートのもと、痛みのある部位を適切に動かすと痛みを改善しやすいです。ただし、痛みのある部位を自己流で動かすとケガが長引いたり、痛みが強くなることがありますので、担当の先生のアドバイスをご参考になさってください。
膝痛が気になるのですが、どのような運動が効果的でしょうか?
乳がん経験者の膝痛は、ホルモン療法の副作用によるものや、変形性膝関節症などが考えられます。これらの痛みは適切な運動で改善することが多くの研究で報告されており、世界的医学雑誌やガイドラインでも運動の効果が実証されています(1,2)。
乳がん経験者を対象とした研究では、関節痛改善のために太ももの筋トレなどがおこなわれており(1)、摩耗した膝関節を筋肉でカバーし、関節痛の痛みを和らげるという考え方が広まっています。ただし、先行研究の多くは運動をする際に筋トレマシンを使っており、自宅で一人でおこなうには難しいです。筋トレマシンが無い場合は、スクワットでも太ももの筋肉を鍛えられます。スクワットは1週間に50回を目安に取り組んでいきましょう。平日に10回ずつこまめにおこなっても良いですし、たとえば土曜日に10回×5セットを取り組んでいただいても筋肉のつきやすさは同じくらいです。
スクワット
ただし、スクワット中に膝が痛む場合もありますので、その場合は別種目へ変更しましょう。足を肩幅よりも大きく広げて、重心を真下に下げるプリエスクワットという種目は、太ももの内側を鍛えられるオススメの種目です。運動動画の詳細はこちらをご覧ください。
プリエスクワット
まずはスクワットを試してみて、膝などが痛くなければ1週間で50回を目安に取り組みましょう。もし、膝が痛む場合はプリエスクワットに変更してみて、痛みが出なければプリエスクワットを1週間で50回おこないましょう。痛みの出る種目は無理におこなわずに、痛みの出ない種目でトレーニングをおこなうことが重要です。
肩周りが痛く腕が上がらないのですが、どのような運動が良いのでしょうか?
乳がん手術後は肩の可動域が狭くなり、腕を天井方向に上げると痛みが出ることがよくあります。その場合は、無理に激しい運動をする必要はありません。まずはストレッチから始めて、肩まわりの可動域を改善していきましょう。オススメのストレッチはショルダーフレクションとセルフローイングです。
ショルダーフレクションは手をリラックスさせた状態で、腕を天井方向へ痛みのない範囲でゆっくり上げていきます。
ショルダーフレクション
セルフローイングは手の平を天井に向け、わきをしめながら、肘を背中の後ろへ引いていきましょう。肘を引ききったタイミングで左右の肩甲骨を背中の中央に寄せることがポイントです。
セルフローイング
どちらも毎日10回が目安です。少しずつ可動域が改善していきます。肩や腕の可動域や痛みが気にならなくなれば、ランニングや筋トレなどに切り替えていけると理想的です。
参考文献
(1)Irwin, J Clin Oncol, 2015.
(2)日本理学療法士学会, 変形性膝関節症 理学療法診療ガイドライン, 2011.