ホルモン療養の副作用

ホルモン療養の副作用

疲れている女性ホルモン療法は乳がん再発リスクを約50%低下させる重要な治療法です。多くの乳がん経験者が5年~10年ホルモン療法をおこないますが、主な副作用としては、倦怠感・関節痛・骨密度の低下などがあります。運動はこれらの副作用を和らげる効果があり、世界中で研究が進んできました。

ホルモン療法と疲れやすさ

ホルモン療法の副作用として、倦怠感(疲れやすさ)があります。具体的には「乳がん診断前は問題なく1日仕事ができたのに、今は半日仕事すると疲労がたまる・ホルモン療法を開始してから長時間歩くとすごく疲れる」などがあります。約400人の乳がん経験者を対象とした研究では、疲れやすさが出やすい方の要素として「体重が重い・閉経している・運動量が少ない」などが報告されています(1)。

運動で疲労改善

運動は乳がん経験者の疲労改善に効果的です。世界最大規模のスポーツ医学系の学会である、アメリカスポーツ医学会のガイドラインによると、運動による疲労改善の効果は多くの研究によって支持されています(2)。ランニングやウォーキングなどの有酸素運動なら週に3回、各運動を30分程度続けると効果的です。また、筋トレのみでも倦怠感が改善することが報告されています。乳がん診断後にどのような運動をすれば良いかお悩みの場合は、東和薬品から乳がん経験者向けの運動動画が出ていますので、こちらをご覧ください。

ホルモン療法とメンタルヘルス

乳がん治療に伴い、気分の浮き沈みが大きくなるなどの症状が出ることがあります。メンタルヘルス改善の方法として、運動は数多くの研究で支持されており、運動後に気分がスッキリした経験がある方も多くいらっしゃいます。運動でメンタルヘルスが改善する理由としては、運動すると気持ちをポジティブにするセロトニンやドーパンミンというホルモンが分泌され、気持ちが安定しやすくなります(3)。また、脳の栄養にもなるBNDFというタンパク質は運動によって増えることが報告されており、脳内で色々な物質が結びつき、気持ちが安定しやすくなります(4)。メンタルヘルス改善のためには有酸素運動・筋トレ共に効果的ですので、お好きな運動を無理のない範囲で少しずつ始めていきましょう。

ホルモン療法と骨密度

ホルモン療法の中でもアロマターゼ阻害薬は、骨密度を減らしやすい副作用があります。信頼性の高いレビュー論文という研究でも、タモキシフェンを服薬している方よりも、アロマターゼ阻害薬を服薬している方の方が骨折リスクが高いことが報告されています(5)。女性ホルモンは骨を保護する作用がありますが、ホルモン療法によって女性ホルモンの分泌や働きが低下するため、骨密度が下がりやすいと言われています。

骨密度改善の運動

アメリカスポーツ医学会のガイドラインによると、がん経験者向けの骨密度改善には骨に負荷のかかる筋トレやジャンプ系の動作が推奨されています。軽い負荷の運動も重要ですが、骨密度改善のためにはより強度の高い運動がおすすめです。ただし、骨転移がある場合や骨粗しょう症がある方は骨折のリスクもありますので、無理のない強度で慎重に取り組みましょう。骨密度の改善には時間がかかりますので、すぐに改善しなくても落ち込まずに、1年程度かかることを前提に運動することが重要です。

ホルモン療法と関節痛

ホルモン療法でよく起こる副作用に関節痛があります。特に寝起きなどの動き始めの際に、「指や膝の関節がきしむように痛い」という声が多いです。運動で関節痛が完全に緩和される訳ではありませんが、運動をしない群と比べると運動を定期的におこなった群は関節痛の痛みが和らぐことが報告されています(6)。関節痛改善のための具体的な運動は、筋トレと有酸素運動の組み合わせが効果的です。散歩などの有酸素運動に加えて、おうちでできる自宅筋トレも併用していきましょう。

参考文献

(1) Huangら, BMC Cancer, 2010.
(2) Campbellら, Med Sci Sports Exerc, 2019.
(3) Portugalら, Neuropsychobiology, 2013.
(4) Sleiman, Elife, 2016.
(5) Tseng, Ther Adv Musculoskelet Dis, 2018.
(6) Irwinら, J Clin Oncol, 2015.

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