コラム

最も重要な体力は何か?

結論

健康のために運動するなら、優先して鍛える体力項目は筋力持久力(心肺の体力)です。この2つは、研究数が非常に多く、エビデンスの厚みが違います。

根拠①WHOが「持久力+筋力」をセットで推奨

年齢を重ねると、若い頃と同じ生活をしているつもりでも、体の中では少しずつ変化が進みます。代表例は、血圧・血糖・脂質、そして筋肉量の減少です。

 

この年代で「健康のために何をやるべきか」を迷ったとき、まず拠り所になるのが国や国際機関のガイドラインです。ガイドラインは、単発の研究ではなく、多数の研究(追跡研究、介入研究、レビュー論文)がまとまっており、医師の先生の教科書となるような信頼性の高い情報です。

WHO(世界保健機関)のガイドライン

WHOのガイドラインでは、

✔週150分以上の有酸素運動

✔定期的な筋力トレーニングの両方を行うことが推奨されています(1)。

 

つまり、「筋力と持久力が最優先」は、流行の健康情報ではなく、ガイドラインレベルの高いエビデンスと一致しています。WHOだけでなく、日本の厚生労働省が定めるガイドラインでも同様のことがいわれており、筋トレと有酸素運動をどちらもして、筋力と持久力を鍛えることが推奨されています。

根拠②持久力は一貫して効果が示されている

ここからが、病院で意外と丁寧に語られにくい話です。筋肉や筋力が健康に大事と今はテレビでもよく耳にしますが、実は筋力よりも、持久力の方が健康に関連するという論文はかなり多いです。大規模な先行研究においても、健康な男女を対象に、持久力と将来の疾患リスクとの関係を調査した結果:

 

✔全死亡リスク低下 -13%
✔心血管疾患リスク低下 -15%

 

持久力が1段階高まるごとに、これだけのリスク低下が示されました(2)。「体重や血圧が同じでも、持久力が違うと将来の疾患リスクが変わりうる」という点がポイントです。持久力は、見た目以上に"健康度"を反映しています。

用語解説:持久力とは

この記事でいう持久力は、いわゆる「長く動ける体力」で、専門的には心肺持久力(CRF:Cardiorespiratory Fitness)と呼ばれます。

簡単に言えば、

✔同じ速度で歩いても息が上がりにくい
✔階段でバテにくいといった"日常の余裕"の土台です。

早稲田大学の研究

日本人データとして価値が高いのが、早稲田大学の研究です(3,4)。日本人男性9,000人を追跡した結果、持久力が高いほど「がん死亡」のリスクが低いことが示されています。

また、持久力を4段階に分けて比較すると、最も低い群と比べて:

✔2型糖尿病(1段階上) -22%
✔2型糖尿病(2段階上) -37%
✔2型糖尿病(3段階上) -44%

持久力が高いほど糖尿病になりにくい傾向が示されています。

根拠③筋トレは死亡リスク低下と関連

持久力が「息切れしにくさ」だとすると、筋力は「体を持ち上げる」力です。

・階段がつらい
・つまずきやすい
こうした変化の奥には、筋力の低下(+筋肉量の低下)が関わっていることが多いです。

東北大学の研究

筋トレの健康効果を、世界中の研究から集めて解析した信頼性の高いレビュー論文として、東北大の論文がよく知られています(5)。

その結果、筋トレをしている人は、していない人に比べて:総死亡・心血管疾患・総がん・糖尿病などが10-17%リスク低下することが報告されています。

この「10〜17%」を小さく感じる人もいますが、私たちの日常生活でこれほどにリスクを下げられる項目はほとんどありません。健康面では十分に大きい差です。

Q. 筋トレしすぎると体に悪い?

実際、東北大の研究では、総死亡などに対して筋トレ量が増えるほど良い、というより、一定量で最も良く見え、過剰だと悪影響が出る可能性が示されています。

ただし、一般的な目線だと過剰なほど筋トレをする可能性は低く、今よりも筋トレをおこなうことで更なる健康効果が得られやすいです。

まとめ

✓筋トレと有酸素で大きな病気を予防できるという研究は世界中で報告されている。
✓筋トレと有酸素運動をセットでおこなうと、特に効果が大きい。

参考文献

①Bull FC, et al. Br J Sports Med. 2020.

②Kodama S, et al. JAMA. 2009.

③Sawada SS, et al. Med Sci Sports Exerc. 2003.

④Sawada SS, et al. Diabetes Care. 2003.

⑤Momma H, et al. Br J Sports Med. 2022.

監修者:奥松功基

筑波大卒。スポーツ医学博士。専門は健康増進のための運動や食事。聖路加国際病院と9年間共同研究をおこない、学術論文6本、学会発表15件おこなう。NHKや読売新聞にも出演。

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