コラム

5時間睡眠は運動に悪影響?

 

 

5時間睡眠は運動に悪影響?

仕事や育児、移動などで

「今日は睡眠5時間しか取れなかった…でも運動はしたい」という日は

普通にあります。
実際、睡眠不足は運動に悪影響があるのでしょうか?

結論

睡眠が5時間前後など少ない日は、運動の質や持久力に影響が出やすく、

同じメニューでも「いつもよりキツい」「粘れない」が起こりがちです。

理由1:30分を超える運動ではパフォーマンスが落ちやすい

短時間の筋トレやスプリントは「気合いで何とかなる」日もありますが、30分以上の持久系(ラン、バイク、球技の走り続ける展開など)は睡眠不足の影響が出やすいです。

実際に、持久系の選手を対象にした研究で、睡眠を数日続けて短くすると1時間のタイムトライアルが遅くなることが示されています。

研究データ:Robertsら(2019)は、持久系サイクリスト/トライアスリート9名で、通常睡眠(約6.5〜7.1時間)と睡眠制限条件(実睡眠が約4.7〜4.9時間)を比較。睡眠制限の条件では60分相当のタイムトライアルが遅くなった(例:58.8分 vs 60.4分)と報告しています。
  • 30分〜1時間の持久系は、集中・ペース配分・気分・眠気などの影響も受けやすい
  • 「出力が落ちる」「いつもよりペースが上がらない」が起こると、同じ練習でも狙いがズレやすい
  • 睡眠5時間くらいの日は、"じわじわ効く系"のトレーニングは特に影響が出やすい

理由2:最大パワーは大きく落ちにくいこともあるが、主観的なキツさが上がりやすい

睡眠不足の日にありがちなのが、「重量は持てる気がする」「でも、いつもよりキツい。集中できない」「フォームが雑になる/スピードが出ない」というパターンです。

① 最大筋力は"必ずしも"ガクッとは落ちないことがある

研究データ:Bambaeichiら(2005)は女性を対象に、一晩の睡眠不足(睡眠2.5時間)の後でも、膝の筋力に悪影響が見られなかった、と報告しています。

もちろん種目・測定方法・個人差はありますが、「睡眠不足=最大筋力が必ず大幅ダウン」とは言い切れない、ということです。

② ただし、同じ運動が"キツく感じる"のは起こりやすい

一方で、睡眠が削られた状態では、体感のキツさ(RPE)やトレーニングの質に影響が出やすい、という研究もあります。

研究データ:Knowlesら(2022)は、筋トレ経験のある女性で、9夜の睡眠制限(ベッドに入れる時間が5時間)と通常睡眠を比較。結果として、トレーニング量の低下はごく小さい一方で、トレーニング中に感じる主観的なきつさが約11%上がる。コルチゾールなどのストレスに関する指標も睡眠不足の方が高いと報告しています。

つまり、睡眠不足のときは「やれなくはないけど、同じ負荷がいつもより重い」→「質が落ちる」が起こりやすい、ということです。

③ "筋肉のつきやすさ"への影響は、起こり得る(特に短睡眠が続くと)

「筋肉がつきにくくなるかも」は、完全に妄想ではありません。

研究データ:Sanerら(2020)は、健康な若年男性で5夜連続の睡眠制限(ベッドに入れる時間4時間)を行うと、筋肉量の維持・増加に関わる筋原線維タンパク合成(MyoPS)が低下したと報告しています。

この研究は「筋トレで筋肥大がどれだけ落ちる」と直接言っているわけではありませんが、少なくとも睡眠が削られた状態が続くと、筋肉を作る側のプロセスが不利になり得る、という方向性の根拠になります。

それでも5時間睡眠で運動する日もある:ムカムカ対策

睡眠が少ない日に運動すると「胃がムカムカする」人もいます。ここで押さえたいのが、運動そのものが内臓(消化管)への血流をガッツリ減らすという事実です。

研究データ:Rehrerら(2001)は、運動中の血流を測定し、高強度運動をおこなうと胃腸への血流が80%低下したと報告しています。

この「内臓血流が一気に減る」状態に、睡眠不足によるコンディション低下が重なると、体感的にムカムカしやすい人は出ます。

対策1:ウォームアップを"長め&段階的"にする(10〜15分)

いきなり心拍が跳ねる入り方を避け、ある程度体をならした状態でメインメニューに入る。筋トレする場合は、普段する重量の50%の重さで10回アップをし、普段の重量の60%で5~7回ほどアップをしてから、メインセットに入ると内臓への急激な血流低下を防ぎやすくなります。

対策2:高強度は後ろに回す

睡眠不足の日ほど、最初から全開にすると胃腸も含めて破綻しやすい。睡眠時間が短い日は高強度運動はおこなわずに、いつもよりも軽めにおこなう。

まとめ

睡眠が5時間前後など少ない日は、運動パフォーマンスに影響が出やすく、特に30分以上の持久系は落ちやすい傾向があります。また筋トレは「できるけどキツい」が起こりやすく、質の低下や回復面の不利につながる可能性があります。それでも運動するなら、ムカムカ対策としてウォームアップを丁寧にして、強度は慎重にコントロールするのが現実的です。

 

監修者

奥松 功基

筑波大卒。スポーツ医学博士。専門は健康増進のための運動や食事。聖路加国際病院と9年間共同研究をおこない、学術論文6本、学会発表15件おこなう。NHKや読売新聞にも出演。

 

参考にした先行研究(単発研究)

  1. Roberts SSH, et al. 2019. Med Sci Sports Exerc. PubMed
  2. Bambaeichi E, et al. 2005. Ergonomics. PubMed
  3. Knowles OE, et al. 2022. Med Sci Sports Exerc. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36136596/
  4. Saner NJ, et al. 2020. J Physiol. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32078168/
  5. Rehrer NJ, et al. 2001. Med Sci Sports Exerc. PubMed
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