疲労やメンタル改善
乳がんの診断や治療にともなって精神面に様々な影響があります。運動は乳がん経験者のメンタルヘルス改善に効果的で、世界中でポジティブな研究結果が数多く報告されています。世界中の研究を集めて解析した論文によると、運動でメンタルヘルスが改善する可能性はとても高く、アメリカスポーツ医学会のガイドラインは、信頼性の高さを表すエビデンスレベルをStrong(強固なエビデンス)としています。
運動で疲労改善
運動は乳がん経験者の疲労改善に効果的です。世界最大規模のスポーツ医学系の学会である、アメリカスポーツ医学会のガイドラインによると、運動による疲労改善の効果は多くの研究によって支持されています。ランニングやウォーキングなどの有酸素運動なら週に3回、各運動を30分程度続けると効果的です。また、筋トレのみでも倦怠感が改善することが報告されています。乳がん診断後にどのような運動をすれば良いかお悩みの場合は、リオールジムのオススメ運動動画をアップしていますので、こちらからご覧いただけます。ストレッチに特化した内容はこちら。
メンタルヘルスの改善
乳がん治療に伴い、気分の浮き沈みが大きくなるなどの症状が出ることがあります。乳がん経験者向けのメンタルヘルス改善の方法として、運動は数多くの研究で支持されており、運動後に気分がスッキリした経験がある方も多くいらっしゃいます。運動でメンタルヘルスが改善する理由としては、運動すると気持ちをポジティブにするセロトニンやドーパンミンというホルモンが分泌され、気持ちが安定しやすくなります。また、脳の栄養にもなるBNDFというタンパク質は運動によって増えることが報告されており、脳内で色々な物質が結びつき、気持ちが安定しやすくなります。メンタルヘルス改善のためには有酸素運動・筋トレ共に効果的ですので、お好きな運動を無理のない範囲で少しずつ始めていきましょう。
関節痛
ホルモン療法でよく起こる副作用に関節痛があります。特に寝起きなどの動き始めの際に、「指や膝の関節がきしむように痛い」という声が多いです。運動で関節痛が完全に緩和される訳ではありませんが、運動をしない群と比べると運動を定期的におこなった群は関節痛の痛みが和らぐことが報告されています。関節痛改善のための具体的な運動は、筋トレと有酸素運動の組み合わせが効果的です。散歩などの有酸素運動に加えて、おうちでできる自宅筋トレも併用していきましょう。
運動とうつ
運動は乳がん治療時、治療後のうつを和らげる効果があります。有酸素運動でうつ予防を目指す場合は、1回あたり30~60分のウォーキングなどの有酸素運動を週に3回おこなうと効果的です。筋トレのみの場合は有効性が実証されておらず、うつ予防を一番の目的とする場合は有酸素運動を優先的におこなうことがおすすめです。有酸素運動と筋トレの組み合わせもうつ改善に効果的と言われていますので、うつ改善と筋肉量を増やしたい場合は、ウォーキングと筋トレの両方に取り組めると効果が期待できます。また、うつを和らげるためには運動量が多い方がおすすめです。1週間あたり90分の運動群と180分以下の運動群で比較すると、運動量が多い群の方がうつ症状の軽減に効果的と、アメリカスポーツ医学会のガイドラインで報告されています。
運動は不安解消に効果的
運動は乳がん診断後の不安を和らげることが報告されており、世界中で研究結果が一致しています。信頼性の高さを表すレベルはとても高く、約3か月運動を継続すると不安の軽減が期待できます。不安を和らげるための有酸素運動の目安としては、1回あたり30~60分のウォーキングなどの有酸素運動を週に3回おこなうと効果的です。筋トレと不安の改善についてはまだ研究数が不足しており、はっきりとしたことは分かっていません。また、有酸素運動と筋トレを組み合わせると不安改善に効果的と言われていますので、時間に余裕があれば有酸素運動と筋トレの両方がおこなえると理想的です(有酸素運動と筋トレを組み合わせると、不安改善に加えて、疲れやすさ改善や体力向上が期待できます)。自宅で1人の運動も不安改善に効果的ですが、専門トレーナーにフォームチェックなどをしてもらうことで不安がより和らぐことも報告されています。
運動と生活の質
運動は乳がん経験者の生活の質(QoL: Quality of Life)を改善させることが多くの研究で報告されています。有酸素運動と筋トレのどちらも、生活の質改善に効果的で、有酸素運動のみの場合は1回あたり30~60分のウォーキングなどの運動を週に2~3回おこなうと効果的です。筋トレのみの場合は30~60分程度の筋トレを週に2セットおこなうと効果的です。日本人乳がん経験者を対象とした研究では、運動で特に回復するQoLとして、体力的な悩み、体型に関する悩み、職場復帰に関する悩みが改善しやすいことが報告されています。