運動と乳がん手術後のリンパ浮腫
リンパ浮腫とはリンパ液が滞り、腕などがむくむ症状です。乳がん術後にリンパ浮腫を発症することもあり、リンパ浮腫の予防はとても重要です。乳がん経験者向けの運動とリンパ浮腫の研究は数多く報告されており、運動とがんの分野で世界的権威のキャサリン・シュミッツ教授(ペンシルベニア州立大学)によると、リンパ浮腫のある乳がん経験者、リンパ浮腫の無い乳がん経験者の両方の場合でも、運動はリンパ浮腫の発症リスクを上げずに安全におこなえることが報告されています。少しずつ強度を上げればリンパ浮腫の発生頻度を低く抑えることができます。
運動とリンパ浮腫の歴史
今から約20年以上前はリンパ浮腫の発症や悪化を防ぐために、乳がん経験者は運動を控えるようにとアドバイスされる時代がありました。しかしその後、運動とがんの研究が大きく進み、運動の効果が見直されるようになってきています。2015年ごろには運動とリンパ浮腫の研究は世界的に数多く発表され、複数の研究結果をまとめたレビュー論文という信頼性の高い研究でも、運動がリンパ浮腫を悪化させないことが報告されました。
リンパ浮腫を予防するための大事な注意点
運動でリンパ浮腫を起こさないようにするための重要な点はStart low, Progress slow(軽い強度から始め、慣れてきたら少しずつ強度を高めていく)ことです。いきなり重すぎる負荷にチャレンジするとケガやリンパ浮腫のリスクもありますので、最初は軽い強度から始め、専門家のサポートのもと運動強度を上げていきましょう。自宅周りに運動施設が無い場合は、乳がん経験者向けのこちらの運動動画を参考に、正しいフォームになるよう意識して運動に取り組みましょう。1人で運動をおこなう時も軽い強度から始め、慣れてきたら少しずつ強度を高めていくことがポイントです。
運動をしないことのリスク
運動不足が続くと、体力や筋肉量が更に減り、日常生活への復帰が大変になりますので、運動不足が続くとどうしても体力は減ってしまいますので、運動習慣と体調のバランスが重要です。日本では乳がん経験者向けの運動の注意点として、重い物を持ってはいけないと言われていますが、専門家サポートのもと軽い重さから始めて、少しずつ強度を上げることで、リンパ浮腫のリスクを減らしながら、乳がん再発予防や体力アップ、体型引き締めなどが期待できます。これらの内容は世界的にも高名な医学雑誌で数多く報告されており、スポーツ医学系の学会でも支持されている内容です。
有酸素運動とリンパ浮腫
ウォーキングなどの有酸素運動とリンパ浮腫については、研究数が少なく医学的に明確な結論は出ていないのですが、有酸素運動は全般的に安全で、リンパ浮腫のリスクは低いと言われています。質の高い研究を精査したレビュー論文という研究では「多くの場合で運動はリンパ浮腫の発症に至らず、重大な副作用なくおこなえる」と報告されています。有酸素運動も筋トレと同様に、最初は軽い強度から始めて少しずつ強度を上げていけると体力が効率的に高まります。また、有酸素運動をすると持久力が着実に高まります。持久力は「疲れやすさ」と「体脂肪率」とも関連する非常に重要な体力です。有酸素運動には多くの利点があります。有酸素運動の重要性はこちらより。